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スローなビジネスの始めかた 10 – 経営者に育休はない
1月 15, 2020
これまで自分でビジネスをすることを推奨するようなブログを10回にわたって書いてきたのですが、もちろん、自分の力だけでお金を稼ぐのは並大抵のことではありません。全部自分に返ってくるというのは、報酬だけではなく、お叱りの声も、トラブルも全部。会社員→起業→会社員→amirisuと渡り歩いてきた私ですが、会社員時代には「毎月とりあえずお給料が振り込まれるってなんて気楽なんだろう」と思っていました。
経営者になると、失業保険に入れません。仕事がなくなっても、会社を畳んでも、失業手当はありません。(とは言え、10年以上雇われていた時にも失業手当をもらったことはありませんが。)失業保険に入れないと何が起こるかというと、育休をもらえないということなのです。法律で定められた最低期間しか休めません。
法律では女性が会社を経営するということがまったく想定されていないのかな、と感じざるをえません。自分の会社なんだから、好きにお金を使えばいいと思われるかもしれませんが、経営者、役員に報酬を払うのは意外と大変で、勝手に臨時ボーナスなど支払われないのです。育休期間中休むのであれば、お給料は出すことができません。まあ何より、仕事が待ってくれないので休めないのですが。
わたしの周りには、起業してから結婚・出産・育児をしている人が何人もいるのですが、皆大変な苦労をしています。ベビーシッターを雇ったり、配偶者の協力は本当に欠かせません。でも出来ないことはない!もしこれを読んでいる方で迷っている方がいたら、ぜひ思い切って欲しいです。体力のある、やる気がある時に起業するのが一番。少数ではありますが、社長業をやりながら出産・子育てをしている人も世の中にいます。それも、素晴らしく。
こんなふうに子育てしたい、と目標にしている友人のひとりがいます。初めて会って青山で会食した時、彼女は9歳になる息子を連れて来ました。私たちがおしゃべりしている間、彼は自分の好きな本を隣で読んで、眠くなってきたらお母さんの膝に頭を乗っけて寝ているのを見て、正直びっくりしました。でも、そうやって彼は事業をやる母の横顔を常に眺め、会話を聞き、成長していきました。家ではもちろん家族の時間も、手作りの食事も大事に。でも子供を置いて会食に行く代わりに、連れて行っちゃう。その思い切りに感心しました。
女性が起業し、経営することがまったく想定されていない社会や法システムの中で、そんなエネルギッシュな女性が増えていったら世の中変わるんじゃないかと、大きな希望をもってamirisuを頑張っています。
スローなビジネスの始めかた9 – とにかくデータに残す
12月 18, 2019
お久しぶりです。このシリーズ、15回分くらいのネタを用意して始めたのですが、雑誌の入稿作業や出張などで途中で終わってしまっていました。とりあえず10回目指して頑張ります。
今回はデータについて。
ひとり、または数人で小さいビジネスを始めようという方にとにかく推奨したいのは、できるだけ紙ベースの手作業はやめましょう、ということ。そして、パソコンのソフトは使わずに、できるだけクラウドサービスを利用しましょう、ということです。それは例えば経理、在庫管理、売り上げ管理、顧客管理などです。
amirisuを始めてから数年、東京と横浜、そして東京と神戸と、離れた場所で遠隔作業をしていた私たち。紙を送り合うことができないので、全て電子データでやり取りしていました。連絡はTwitterやLINEのチャット(今は専用のクラウドシステムを利用しています)。メモはEvernote。データはDropbox。経理はクラウド会計。見積もりや料金表をもらっても、できるだけスキャンしてDropboxに保存します。
これらはすべてなくなる心配もなく、検索が可能です。そして、人数が増えてもみんなで共有が簡単です。Dropboxやクラウド会計などはもちろん月額の利用料がありますが、パソコンを換えてもソフトを買い換える必要もなく、新しいサービスを常に使えるという利点があります。
人数が少ない会社で一番避けたいのがデータの入力作業。そして伝票の手書き。最初は手作業がたくさん発生していた仕入れ、入庫、在庫管理、販売、発送も、常に新しいシステムを探し続けてShopifyに行き着き、今では初めての商品の情報を1回入力するだけで、仕入れから販売まで同じデータを使って行うことができるようになりました。アメリカも日本も、店舗もオンラインショップも、すべて同じシステム上で在庫管理しているので、手作業はほとんどありません。売り上げデータを見ようと思ったら、その画面を開くだけ。
このようなシステム、かつては大企業がシステム会社に大金を払って開発してもらうものでしたが、今では安い月額料金で利用することができます。皆さんが想像するほとんどのサービスは、おそらくクラウドであると思います。調べる手間はありますが、その威力は絶大です。ソフトなどを買う前に、まずは調べてみましょう。本当にオススメです。
スローなビジネスのはじめかた 8 - ちゃんと儲ける
7月 18, 2019
スロービジネスにおいて、誰とやるかや何をやるかも重要ですが、どうやってお金を頂くかももちろん大切です。
これまでなんとなくスローなビジネスという言葉を使ってきましたが、そもそもそれはなんでしょうか。自分や従業員の時間や生活を大事にしながら、手をかけたものなどスローライフに関係する商品やサービスを扱い、ポリシーをもって持続的に行うビジネス、でしょうか。そんな定義で違和感がないのかなと思います。
これがなぜ表題の「ちゃんと儲ける」に関係してくるかと言えば、お金がなければ自分や従業員の時間や生活を大事にできないし、持続的に行うことができないからです。
「趣味だし、別に儲けなくてもいい」と言ってほぼ利益ゼロで商売をする人が、編み物の世界だけではなくどの業界にもたくさんいます。これは実は、かなり利己的なやりかただと考えています。儲けなくていいと言いながら、価格を安くしてたくさん買ってもらいたい、そのような深層心理もある気がします。または、商品に自信がないからお金をあまり頂けないと思っているのかもしれません。それは、あまり良くない商品を売っているということでしょうか。
そして、自分は儲けなくていい、という人が副次的に生み出してしまうのが、低賃金で働く人たちです。その業界で食べていかなければならない人も、他のお店があまりにも安い金額で商品を販売していたら、ある程度合わせざるをえません。すると、スタッフへもお給料があまり払えなくなります。それでは食べていけないので、その仕事を本気で本業にする人が減ってしまいます。そうして「食べていけない業界」の1つとなっているのが手芸業界です。従業員も大事にできないし、持続性もありません。「儲けなくていい」というのが利己的な態度だということが、お分りいただけたでしょうか。
自分の業界にもっと若い人や素晴らしい人達に来てもらい、業界をより発展させるためにも、そして、まさに今、頑張っている他のお店や作家さんのためにも、値段を必要以上に安くしすぎないことが、とても重要だと思っています。みんなが商品の質や手間に見合った正当な代金を受け取り、時間や心の余裕を持って生活できるようにしたい。
スローなビジネスを始めたいと思っている方には、ぜひ考えていただきたいポイントです。
スロービジネスのはじめかた 7 - 初めてのクレーム
7月 12, 2019
どんな仕事をするにしても、フリーランスや自営業など、個人事業主となるなら覚悟しなければいけないのがクレーム。楽しくないけど、避けて通れない話題です。(保険会社で働いていた身としては、クレームは本来保険金の請求のことなので、この言葉間違った使いかたなんですけどね。英語ではクレームとは言いません。)
最近は電話だけではなくて、メールというのもあります。物を売る、サービスを売る、というのは、お客様からの感謝の言葉をいただくことも多くとっても楽しいことなのですが、一定の割合で満足いただけないことも発生します。Amazonのようにほぼ機械で管理しているところでも、ごくたまにですが個数が間違っていたりすることもあります。ましてや、生身の人間がやっている仕事、間違いも生じますし、商品に不具合があったり、輸送の途中で問題が生じたり、挙句には配達員の対応に関することまで。
私は実は20代にも起業したことがあって、当時はかなり珍しかったネットショップをやっていたのですが、商品に傷があると言われた返品の中には、言われた傷が全く見当たらないことすら何度もありました。
大きな会社だったらコールセンターの方が代わりに受けてくれるお客様からのお叱りのお問い合わせ、自分で受けなければなりません。最初は泣きそうになりますけど、段々と冷静に受け止められるようになります。頑張っていきましょう!
お客様によっては本当に困っていて怒っていることもありますけれど(その時には本当に真摯に謝罪し、できる限りの対応をします)、実はカッとなりやすい性格の方(言ったらスッキリして思いの外気にされていない方もいらっしゃいます)、メールになると意図を超えてきつい口調になってしまう方、文章が得意でない方などもいらっしゃいます。そこでショックを受けてうまく対応ができなくなってしまうより、冷静にベストな解決策を考えて実行できる方が最終的には喜ばれるはず。そう信じています。新しく入ったスタッフでも泣かずに対応できるように、想定されるケースに対しては、対応策をあらかじめ考えておきましょう。
そして、もう一つ大事なことは、できることとできないことを最初からキチンと線引きしておくということです。細やかなサービスを提供する人員がいなかったら、最初からそこはやらないと宣言しておくこと。できないのにやり始めて、注文が増えてずさんになってくると、それがクレームにも健康を害することにもつながってしまいます。個人でパターンを売ってみよう、という方など、ぜひそこを予め考えてみましょう。
一般のコールセンターでは、お客様対応係の人が精神を病みやすいという話をよく聞きます。ほとんどがアルバイトや派遣の人たちです。逆にお客の立場になった時にそこを忘れずに自分もいたいし、皆さんにもぜひ考えてみて頂きたいです。
スローなビジネスのはじめかた 6 - 1足す1は2ではない
7月 05, 2019
今回は、人を雇うことについてお話ししたいと思います。
「1足す1は2ではない」というのは、スタッフが増えるにつれていつも私たちが感じていることです。これには、色々な意味があります。
でもまず、amirisuが初めてのスタッフを迎えた時のことを振り返りましょう。
amirisuを始めて以来、アシスタントが欲しいというのが私たちの夢でした。大して稼いでもいないのに、もう誰か雇いたいと話すのが私たちらしい。そもそもは、私がフルタイムで働いていたので、細々としたことをすべてトクコさんがやらなければならなくて、誰かいたらいいのになというのがありました。
お店を始めてから、最初は週に3日しか開店していなかったので残りの3日は他の仕事ができたのですが、入荷量が増え、オンラインショップの発送が増え、そして閉店日にもお客様が訪ねてくるようになると、2人では到底回せなくなりました。そこで、知り合いの方に発送を手伝ってもらうことにしました。週に何日か、お店番をしながら発送もやってくれることになり、私たちはお店から少し自由になりました。外に打ち合わせに出かけて行ったりできるようになったのです。
でも、初社員を雇う日は意外にすぐにやってきました。トクコさんが東京に教えに行っている間の作業量が多くなりすぎて、回せなくなってきたのです。事務作業の量も、なかなかのものでした。とはいえ、ここはamirisuの分かれ道でした。自分たちの給料も保証できないなか、フルタイムの社員を入れるのには大変勇気がいりました。その人の人生も掛かった問題です。「夢のアシスタント」なんて冗談めいてずっと話していましたが、実際に人を雇うとなると、そんな浮かれたことは言っていられなくなりました。これだという方に声を掛け、1ヶ月くらいじっくり考えてもらいました。こんな会社に来て本当にいいのか。
数ヶ月後、晴れて初社員を迎えました。東京店開店のためにしばらく東京出張に行ったりできたのも、彼女のお陰です。
人を雇うときに考えなければいけないのは、1人が2人になっても、売り上げは決して倍にはならないということです。(決してというのは正しくないですね、きっとネイルサロンのようなところなら、なります。でも物販は難しい。)そういう意味で、1足す1は2ではありません。それなのに、お給料というコストは2人分になります。
でも2人いると、できることが倍どころか、何倍にもなります。2人の相乗効果で新しいアイデアが生まれたり、人脈が広がってチャンスができたり、単純な作業量だけではない問題です。その意味でも、1足す1は2ではありません。売り上げというのは、同じように同じものを売っていたらだんだんと下がってくるものなので、この広がりは必要不可欠だと思います。
人を雇うときに、気の合う自分と同じタイプの人を増やしたがる人がいますが、これは危険です。それではできることも倍にはならないし、人脈も広がりません。同じ仕事が得意だと、仕事の分担が難しくなります。自分と違うから、価値があるのです。できることも、発想も、普段付き合う仲間(人脈)も違う。最近ダイバーシティー(多様性)というのがビジネスでもキーワードになっていますが、2人、3人の小さな会社にとってダイバーシティーは特に必要だと思います。仲の良い友人を雇わない方がいい理由は、ここにもあります。
そんなことを考えながら、もしフリーランスや自営業で何かやってらっしゃるようだったら、スタッフを迎えてみるのも手かなと思いますよ。私たちはよく、色々な方にオススメしています。もちろん責任は重大ですが、自分の健康と次の一歩のために。
スローなビジネスのはじめかた5 – お金の管理は最初から
7月 03, 2019
糸井重里さんと邱 永漢さんの対談集、「お金をちゃんと考えることから逃げまわっていたぼくらへ」 という本があるのですが、このタイトルを見たとき思わず「あら、わたしのことだ」と思って手に取りました。ちゃんと考えなくても良いように、収入より支出を少なくすれば大丈夫だろう、と片付けていたくらいです。
でも、ビジネスをやるとなったら話は別です。とにかく1日目からきっちり経理をやりましょう。わたしのように苦手だなと思ったら、できる人にやってもらいましょう。きっちりしたことが得意なトクコさんがいて本当にラッキーでした。
人を雇うようになったりして、経理を誰かにやってもらうようになっても、最終的にお金の管理は自分でやらないと絶対にダメ。ここをおろそかにしていると、思わぬ時に悲しいことになります。これまでそんなケースをいくつも見てきました。そこができなかったら、やっぱり自分でビジネスをやるには向いていないのではないかと思います。もちろん、別にそんな大それた会社なんてやろうなんて思ってないんですよ、とほとんどの方は仰るでしょう。でもね、わたしたちだって会社なんてやろうと思ってなかったんですよ。
まだamirisu を立ち上げた時からきちっと経理をやっていたおかげで、会社を登記して銀行に行った時には既に1期半分の決算書がありました。
役割分担については別なときに触れようかなと思っているのですが、amirisuについていえば、わたしは細かいコスト計算したり事業計画書を書いたりするのは(なんせコンサルをやっていたくらいなので)できるのです。できないのは、きちっと経費をつけたり期日までに支払いをしたり、足りなかったらどうするか考えること。なんせ「お金を余らせればなんとなかる」で20年来てしまった人間で。ですから、トクコさんと出会ってなかったらきっと会社をやっていなかったと思います。もしくはトクコさんも苦手だったら、amirisuは会社になっていなかった。
こんな細かいレベルで能力を補い合っているわたしたち。そんな意味でも、2人で会社を立ち上げたことに感謝しています。
スローなビジネスのはじめかた4 – 持続性ということ
6月 25, 2019
会社員をやっている、または経験がある方はよーくお分かりかと思いますが、仕事とはマラソンであり、100m走ではありません。今日徹夜して頑張りすぎちゃって、明日仕事を休むなんてことが許される職場はほとんどない。あるかもしれませんが。身体を壊しちゃって、仕事が続けられなくなるなんていうことももってのほか。そんな職場はブラック企業と呼ばれます。
せっかく自分でビジネスをやるんだもの、ブラック企業を自分で作ることはありません。会社とは、1年2年の問題ではなく、10年、20年、いや100年だって続けるもの。終わることのないマラソンです。だから、明日も楽しい気持ちで仕事ができるよう、8分目で終わらせることが大切です。
これは実は、言うは易し、行うは難し。
まず、ついつい頑張りすぎちゃう問題があります。少しでも良いサービス、商品を提供しようと、ご飯の時間も寝る時間も惜しんで作業をしちゃう。
次に、お客様に「ノー」と言えない問題があります。これは難しい問題です。お客様の要望に精一杯お応えしようと(もちろん、それは大切なことですが)、リクエストを全て聞いてしまう。お断りしたら、もう2度とお店に来てもらえないのではないかと不安になります。
世の中のほとんどのブラック企業は、この「ついつい頑張りすぎちゃう問題」と「お客様にノーと言えない問題」(そして社員を使い捨て問題)で出来上がっています。ここは、心を鬼にして線引きをしなければいけません。自分が8分目の力でできる作業量か?スタッフが明日も気持ちよく出社してくれる作業量か?
わたしとトクコさんが何かを始めるとき、考えるのは持続性です。注文が100件だったらできるけれど、200件になってもできるか?スタッフが1人辞めてしまった時に、このサービスを続けられるか?間違いを起こさずに50回、100回、500回繰り返せるか?1年、3年、5年続けられるか?
それを考えて、ショップポリシーを作りましょう。お断りしなければならないことも色々出てきてしまいますが、お店の商品を気に入って、応援したいと思ってくださるお客様ならわかってくれるはず。そう信じて、自分の健康、そして持続性のために決断しましょう。
スローなビジネスのはじめかた3– 2人で会社を始めるということ
6月 19, 2019
よく言われることなのですが、世の中には起業向きの人と、経営向きの人がいます。起業向きの人はアイデアを思いつく人、そして、会社立ち上げの時に直面する「マジか」というような事態に知恵を持って立ち向かえる人です。一方で、経営向きなのは、財務に強く堅実にちゃんと会社を回していける人。
と、一般的には言われていましたが、最近わたしが感じるのは、両方必要なのではないかということです。ビジネスのスピードがとても早くなってしまい、以前だったら5年、10年くらいのスパンで立ち上げていた新規事業も、1~3年でやらなければならない時代になってきました。会社を続けていくには堅実さも大変重要ですが、常に未来を考えていなければなりません。これを1人で行うのは、かなり難しいことなのではないかと思います。普通の会社には経営者が1人しかいません。
社員が50人、100人いたら、堅実係の人とアイデア係の人にそれぞれ案を出させて社長が決める、なんてこともできるかもしれません。でも小さいスタートアップにはその人員はいません。
代表者が2人いる、というのは実はとても良いことなのではないかと思うのです。
経営や起業の本を読んでいると、意思決定者が複数いることの悪い側面ばかりが書いてあり、複数で社長をすることが基本オススメされていません。2人の意見が合わなかったらどうするのか?みたいなことばかりです。(銀行でもおじさんたちに言われます。)でも思います。一番身近なパートナーを説得できなくて、どうしてお客さんを説得できるのか。たいていトクコさんが説得される側で、わたしが説得したい側なんですけどね。
スタッフには方針が2つ伝わらないよう、それだけは気を配っています。たまにやっちゃうかもしれませんが。
2人で会社をやるうえで一番いいことは、会社に人生がかかっている人が少なくとも自分だけではない、ということです。これは大きいことです。心強さが2倍どころか、100倍くらいになります。よく眠れます。結婚すれば喜び2倍、悲しみは半分と言いますが、共同経営者がいるのもきっと、それに似ているのではないでしょうか。
グーグルも2人で始めた会社だし、ある尊敬している会社は代表が3人、世の中にはなんとかブラザーズ、みたいな会社名も沢山あります。兄弟2人とかそいういうのがやっぱりいいんじゃないかなと思うのです。でもきっと、ケースバイケースなのでしょう。わたたちは少なくとも、日々「1人じゃなくてよかった」と口々に言い合っています。
今日はちょっと堅い話になってしまいました。ではまた次回。
スローなビジネスのはじめかた2 - パートナーを見つける
6月 17, 2019
もともとオンライン雑誌のようなことをやりたいなと思っていたのですが、1人でやるつもりはありませんでした。フルタイム働いていた仕事を辞めるつもりはなかったし、到底続けていける気がしなかったからです。だから、いつか一緒に仕事ができそうだと思える人と出会ったら、何かを始めようと思っていました。出会わなければ、やらない。
そもそも、編み物の雑誌をやろうとも思っていませんでした。大学院の専攻は都市計画だったので、都市や建築に関わる情報発信をしようかな、と思っていました。最初の仕事がそんな仕事だったので、なおさら、1人でできないのは分かっていました。
2011年、震災のあとでトクコさんと知り合ったとき、ものすごく熱い想いで本を作りたいと思っていることを知りました。こんなに一生懸命な人だったら、手伝いたい。そう思いました。一緒にできそうだなと思った理由は4つ。
読書好きで、文章を書くのが得意だということ。
自分が不満に思っていることを、自分で本気で変えたいと行動に起こせる人だということ。
はっきりモノを言うこと。
お友達ではなかったということ。
おそらく普通の人からみたら、ちょっと不思議に思う基準なのではないでしょうか。ともあれ、ここからamirisuはスタートしました。
最初の2つの基準は、わたしたち2人に共通しています。お互いがお互いの書く文章を好き。雑誌をやるのだから、文章が書けるのは当然のこと。でも、遠距離で仕事を始めたわたしたちにとって、チャットやブログを通して間違いなくコミュニケーションができるというのは本当に大きかった。誤解を招かないよう、言葉にこだわる癖が付いていたからです。
トクコさんと比べてわたしは穏やかだと思われがちだと思うのですが(笑)、大学では環境問題、大学院では都市計画を勉強していたわたしは、実はとっても世の中に腹を立てている人間です。卒業後、就職先を選ぶときにも、候補となるような会社のどれもがやっていることが気に入らなくて、結局妹と起業してしまったくらい。歳を取るにつれて自分が解決できないことに怒るのをやめたおかげで、ずいぶん暮らしが楽になりました。みんなにも大人の事情があるのだ、ということを学んだからです。でも、編み物は違いました。世の中そんなもんだ、と捨て置けなかったし、自分で何かできる気がしました。
4番目の、お友達ではなかったということ。意外だと思われるかもしれません。今では大親友を通り越してもう家族と化しているわたしたち。でも、雑誌を立ち上げようと決めた時はまだ2回一緒にご飯を食べたきりでした。Twitterでもダイレクトメッセージやコメント返しなど、ほぼやらない2人なので、本当に2回会って、お互いのブログを読んでいただけ。でも、一緒に仕事ができそうだ、という理由で始めました。
趣味のグループならともかく、何かビジネスを始めようというとき(雑誌はタダでもパターンを売るのだから、立派なビジネスです)、お友達とやるのは一番お勧めできません。お互い尊敬できるビジネス上のパートナーが一番。家族が2番。それは、絶対に喧嘩になるからです。仕事のなかでお互いの仕事ぶりに100%満足できて、ダメ出しが必要ないなんてことはほぼ考えられません。友情が大事で言いたいことも言えない。そんな相手と仕事をすると、仕事のクオリティが下がってしまいます。何より、自分がストレス。お友達と会社をやって、裏切られて仕事も友人も失った人も見てきました。家族なら、どんなに喧嘩をしても仲直りできます(実践済み。)
そして、この7年間、トクコさんとわたしは喧嘩らしい喧嘩をしたことがありません。ビックリでしょ。それは、お互いの仕事ぶりにいつも満足しているから。自分が苦手なところが相手が得意、という不思議な巡り合わせのわたしたちです。いつも感謝しています。これはもう、奇跡に近いことだと思います。
パートナー選びのコツや基準、きっと皆さんがやりたいことによって変わってくるでしょう。でもこんな話もあったと、少しでも参考になりますように。
スローなビジネスのはじめかた 1 ー 自分の肩書きを作ろう
6月 15, 2019
こんにちは、トクコさんの連載が終わってしまってちょっとがっかりしているメリです。連載が終わったら次は何か書こうと思っていたら、意外と早くにそのときが来てしまいました。
考えたタイトルは、「スローなビジネスのはじめかた」。トクコさんの連載がamirisuをスタートさせたところでほぼ終わっていますし、今わたしたちの居場所となっているこの会社について、今の目線から語ってみたらどうかと思ったのです。世の中にはスロービジネスという、こだわった商品を作ったり売ったりして、成長もさせず利益もあまり出さずに会社を運営するという、ユートピアのような言葉があるようなのですが、ここでいうスローなビジネスは重なる部分もあるけどちょっと違います。スローファッションやスローなライフスタイルを叶えるために、わたしたちが始めたビジネスとでも言いましょうか。
会社を始めてもやっていけるんだろうか、とドキドキしながら飛び込んだ生活を、もう5年も続けることができました。振り返りの意味でも、創業期のわたしたちにも触れながら、普段考えていることについてお話ししたいと思います。
前置きが長くなりましたが、今回のテーマは「 自分の肩書きを作ろう」。
どんなつまらない一歩でもいいんです。何かはじめてみる。
40歳手前で起業してよかったなと思うことは、とにかく人脈の豊富さです。会社員を頑張って14年続けたおかげで、もちろん仕事の面でも勉強になりましたが、本当に多くの人とめぐり合うことができました。今では、困りごとに応じて相談できる相手が沢山いて、それがamirisuをここまで続けてこられた要因の1つともなっています。
人脈は黙っていてもできるものではありません。まずは色々なところに出かけて行くこと。いざという時にものをいうのは、自分と違う知識や経験を持っている人です。同じ業界の集まりに行っても広がりはありません。異業種交流会というものがよく開催されていますが、思い切って参加するといいことが沢山あると思います。
でも「XX株式会社の田中です」と言って、金融機関でマーケティングの仕事をしています、としか言えなかった頃、そんな集まりに参加するのが苦痛でした。仕事の話は機密事項も多いし、正直話すことがありません。それがamirisuを始めた途端に、とっても楽になりました。なんせ編み物雑誌なんてみんな見たこともありません。「なんですかそれ?」から始まるので、話すことが沢山あります。
面白いことをやっている、ということで、友人から声をかけられることが増えました。面白い人が沢山来るからメリさんもどう?と言って、イベントに呼んでもらえるようになりました。今では2歳児がいてそうそう出かけられませんが、それでも異業種交流会的な集まりに誘われたらほぼ断りません。とにかく参加する。そうして芋づる式に紹介してもらったり、お友達になった人たちが、今の支えになっています。
もちろん、同僚や元々の友人、家族は頼りになる支えです。でも会社の相談をすることはあまりできません。ビジネスの側面でアドバイスをもらえたり、最新の情報を共有してくれたりする友人知人というものが、多ければ多いほどいい。それが、amirisuを7年以上続けてきたわたしたちの実感です。
それにはまず、何か始めてみることが必要です。自分の肩書きを作ろう。会社勤めしている人は、2枚目の名刺を作ろう。どんなことだっていいんです。そして、ウェブサイトを作ってみてください。そこから何か始まるかもしれません。