The story of GENMOU
GENMOUが海を渡るまで。
Photo by Kotori Kawashima
ダルマ糸といえば日本では手縫い糸の印象が強力です。祖母や母の裁縫道具箱に入っている手縫い糸のダルママークや、それで着物や布巾などを縫う姿を見て育ったという方々も多いでしょう。家庭の中ではほんの小さいものですが、なぜか印象深いのは、変わった(ちょっと怖い)ダルママークによるのではないかと思います。ブランドのトレードマークとなっている達磨、6世紀に中国で禅宗を広めたという僧侶が起源です。丸い姿で表現されるのは、9年間座禅を続けているうちに手足が腐ってなくなってしまったという話が伝わっているからなのだとか。その赤く丸いかたち、そしてコミカルな顔は、今では努力の末に目標を叶えることのシンボルとなっています。
さて、DARUMAの毛糸。この会社がウールの毛糸を作り出したのはここ数年の話です。かつてはほとんどの商品が量販店向けのアクリル100%の毛糸でしたが、数年前から様子が変わってきました。当時企画室長だった現在の社長さんが、このままではいけないと思い切って舵を切ったところから始まりました。毎年、日本の毛糸メーカーの多くが新商品として新しい糸を発表している中で、質の良い、他社メーカーにはない商品を作ろうという挑戦が始まりました。原毛に近いメリノウールはそんな時に作られた商品です。できるだけ軽くて柔らかい毛糸を作りたい、というチームの想いから生まれました。「糸を軽くするためにはアクリルなどの合繊を混紡することがいちばん簡単なのですが、手触りを考えると天然繊維100%で作りたいと思いました。そこで思いついたのが、ほとんど撚りをかけずに糸にすることでした。」粗糸(ウールを撚りをかけずに糸状にしたもの)を繫ぎ止めるにはナイロンの糸を巻きつけるのが一般的ですが、原毛に近いメリノウールではそれも同じメリノウールで作りました。その細い糸を作るには、原料のウールも質の良い、とても均質で細いものでないと難しく、現在のものに行き着いたのだとか。原毛という名前をつけたのは、メリノ種の羊を触った時のふっくらとした手触りを思い描いたから。
DARUMAとamirisuが何か一緒にできないか、と話し合いを始めたのは2014年の秋になります。amirisuではたくさんの毛糸を海外から輸入していますが、日本に質の高い商品があればぜひ海外に紹介したいというのが、会社設立当初からの目標のひとつでした。DARUMAの方々と一緒に仕事をするきっかけのひとつは、その商品開発に関する知識の深さ。原料、紡績、染めのあらゆる工程について、本当にたくさんのことを教えていただきました。こんな糸が作りたい、と思ったら、それをどうやって作るかはちゃんと知っている。真剣にものづくりに取り組んでいるメーカーです。一方で、DARUMAは次の世代に向けて、DARUMAにしかできない、ワクワクすることにみんなで取り組みたい、と考えていました。
当時の商品をつぶさに検討した結果、原毛に近いメリノウールのような糸は日本にも海外にもあまりないし、今後力を入れていきたい商品であるということになりました。歴史的に羊毛製品の生産で知られる愛知県の尾州で作られているこの糸。地域には紡績工場や染め工場が集積していて、それらを行き来しながら作られています。日本では30g玉で販売していますが、海外向けに50gにパッケージし直し、GENMOUと新しいロゴの入ったラベルをつけました。
1年以上かけて準備したGENMOU 2017コレクション。DARUMAチームのイメージを伝えるために様々な画像を集め、デザイナーさんに伝えるところから始まりました。「特に日本的なコレクションを作りたいとは思っていなかったのですが、参加してくれたデザイナーさんたちは幾何学的な模様や日本の景色に触発された様子でした」とDARUMA。お客様や海外の皆さんに、背景にあるものづくりの現場を感じてもらえればうれしいと、撮影は滋賀の自社工場で行いました。
GENMOUは海外へ紹介する最初の糸となりましたが、今後も挑戦は続きます。これからも他にはない、ワクワクすることをしていきたい、とチームは意気込みます。そして、それは毛糸や糸だけではないかもしれない、と。
原毛に近いウールの海外版、GENMOUはamirisuを通じて海外の毛糸ショップへ、そしてお客様へ届けられています。2017年コレクションはRavelryで、そして日本語版はamirisuで翻訳し販売します。