6月 01, 2024

藁細工の技を受け継ぎ、身につけるアートに
花背WARA

藁細工の技を受け継ぎ、身につけるアートに<br>花背WARA

インタビュー :宮下亜紀
写真提供:花背WARA

amirisu featured @ Hanase wara ▲シバクサを編んだフリルブレスレット。

 

優美なフリルの、ブレスレット。葉っぱのような、耳もとに寄り添う、イヤリング。花背WARA 藤井桃子さんが手がけるジュエリーは、独特のフォルムをもち、エレガントでいて、プリミティブ。身につけてみると、軽く、肌になじみます。クリエーションのベースにあるのは、昔ながらの手仕事、藁細工です。

 

amirisu featured @ Hanase wara

▲葉っぱのようなイヤーアクセ。
原点は、わらじ。 

 

街中から車で1時間ほど、京都の山間にある里山、花背。藤井さんはここで生まれ育ち、いまも拠点にしています。わら細工は、稲わらなどを編んでつくる、暮らしの道具。しめ縄はじめ、鍋敷きやわらじ、かごなど、地方ごとにさまざまな技法が根ざし、花背でも編まれてきました。

「実家にもあたりまえにあったので、興味を持つことはなかったんです。だけど、ふと、どうやって編んでいるのか気になって、地元のおばあちゃんに手ほどきしてもらったんです。プラスチックに取って代わられて、つくる人も減っているけれど、すたれてしまうのはもったいない。いざ、手を動かしてみて、技術を身につけたい衝動に駆られましたね。若い人たちが身につけるおしゃれなアクセサリーができる、そう直感しました」

京都市立芸術大学で版画を専攻していましたが、大きな可能性を感じ、花背WARAをスタート。大学主宰のイベント「THE GIFT BOX」、工芸や手仕事を紹介する見本市「dialogue kyoto」などで作品を発表。母校出身のクリエイター、百貨店やセレクトショップのバイヤーの目にもとまり、道がひらけていきました。

藤井さんが、素材として使うのは、稲藁とシバクサ。稲藁は、花背の田んぼで自ら育てています。苗づくりからはじめ、田植え、草取りと体力仕事が続きます。刈り取り時期を三度ほどに分けて、青田刈り・稲刈りを行い、干して乾燥させる。日に当たり過ぎると色が抜けてしまうので、気をつけながら、雨にも当てぬように。乾燥したら、きれいに掃除し、さらに厳選。木槌で打ち、ようやく使えるまでになります。

 

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▲編んでいるところ 

 
「親戚に力になってもらいながら、いい素材を使いたい一心で、「あさひもち」という品種を栽培しています。120cm以上の背丈になり、茎が太くしっかりしていて藁細工に適しているんです。

 藁は自然物だから、一本一本、ちょっとずつ違う。太さが違う藁が一本混ざると、悪目立ちしてしまうから、色や太さ、固さでより分けておきます。時間がかかるけれど、選別はとても大切な作業です。90代の藁細工名人の方から、「桃子さんが育てた稲藁は素晴らしい」って言ってもらった時は最高に嬉しかったですね」

おなじく素材にする、シバクサ(チカラシバ)は、花背に自生する野草。ちまきの笹をくくる紐としても使われて、とても丈夫。7月末から8月初めの限られた時期に刈り取り、乾燥させて、掃除し、選別。この作業も稲藁と同じく、自分の手で。

「作品づくりでは、編み方からデザインを考えたり、しめ縄や俵といった昔の造形から着想したり。チェーンやひょうたん型といった自分の好みの形から、展開していくこともありますね。

常に大切にしているのは、藁の温かみ。淡水パールや絹糸、水引などとも組み合わせますが、あくまで、藁の造形の美しさを大事に。どこにもないユニークさ、わたしにしか出せないカタチを追求していきたいです」

 

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 ▲桟俵をモチーフにしたイヤーアクセ、 SUN。

 
はじめは緑味のある色ですが、日光やライトに当たると変化していくそう。藁だから軽く、インパクトのあるカタチですが、自然素材なので、どんな装いにも思いのほか、しっくりと合います。

 

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 ▲緑がかった藁の色が日光などによって経年変化します。


作品づくりを中心に活動しながら、並行して取り組むのが、寺社のしめ縄づくり。作り手が少なくなる中、できる中でせいいっぱい手がけ、藁細工のワークショップ、地元の次世代への伝授なども行っています。

「しめ縄は、神域に使われて、悪いものを払拭するとされています。藁のジュエリーをお守りのように身につけてもらって、しあわせにつながれば。日本文化を身近に感じてもらえる、身につけるアートとして楽しんでもらいたいです」

良さを感じてこそ、次につながる。藁の温かみを、手にとって、身につけて、感じてください。

amirisu fearuted @ Hanase wara

 ▲お正月のしめ縄飾り、ちょろけん。

 

 

 

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 藤井桃子/Momoko Fujii

京都・花背に生まれ育ち、地元のお年寄りの方たちに教わった藁細工から、2013年「花背WARA」をスタート。地域内外の名人に習い、自ら稲作し、素材から調達。藁の可能性を探り、オリジナリティのあるジュエリーやオブジェを制作。展示会など活動についてはInstagramにてお知らせ。

http://hanasewara.com
https://www.instagram.com/hanasewara/