エストニアのハプサルレース
Haapsalu Lace Shawl from Estonia - Issue 3
初出:2013年amirisu 3号
Text and Photo: 大内いづみ
"結婚指輪の中を通るレースショール"をご存知ですか?
エストニアの小さな町ハプサルに伝わるショールは、思わずため息が出てしまうほど繊細で細かいレース。極細糸を使い、Nupp (ヌップ)と呼ばれる独特な技法を使って柔らかく編まれているのが特徴です。伝統的な四角形ショールは中央部分とレースエッジ(縁)を別々に編み、後から縫い合わされます。仕上げ(フレーミング)は、大きさを自由に調整できる木枠フレームに釘が打ち付けてあるものを使います。
このレースが人気が出たのは19世紀始め、ハプサルが当時リゾート地・療養地として賑わっていた頃。海辺のプロムナードを歩くロシアの皇族に薄手のショールがとても重宝された事から始まります。一時は機械生産するほどロシアからの注文が相次ぎましたが、機械ではnuppを編めないため現在のハプサルショールはすべて手編みになりました。町としての取り組みも充実しています。女の子は全員学校で編みかたを習い、編物専門学校もあるほど。夏には国内外のレースマニアが集結するフェスティバルも催され、nuppパターンを使った作品コンペティションも恒例になっています。伝統を守りながら若い世代のデザインも続々と出てきているようです。
レースショールを編むのは、靴下編みと同じくらい病みつきなるもの。柔らかくふわっとnuppを編むテクニック、そして忍耐力が必要ですが、一度は編み上げてみたくなりますね。
はりきってnuppを入れすぎると、指輪の中を通らなくなるのでご注意を!
写真1: 伝統的な四角形ショール。nuppの目数も様々で大きさが異なる
写真2, 3: 新しいレースデザイン、三角ショールやエプロンなど