10月 01, 2013

デザイナーインタビュー
Olga Buraya=Kefelian

デザイナーインタビュー<br>Olga Buraya=Kefelian

 

オルガ・ブラヤ=ケフェリアンはベラルーシ出身、アメリカ在住のユニークでクリエイティブなデザイナーです。直近の3年半、ご主人のお仕事の関係で日本で過ごし、5月にアメリカへ帰国したばかり。その帰国の直前、4月のある午後、オルガにインタビューをすることができました。

 

amirisu: 時間を作ってくれてありがとう、オルガ。

オルガ: こちらこそ、インタビューしてくれてありがとう。

amirisu: オルガが日本に住んでいると知った時は本当にビックリしたし嬉しかった。日本のモチーフを活かしたデザインを発表する度に、日本人であることを誇りに思ったわ。なぜ日本に滞在することになったの?この3年半どうでした?

オルガ: 本当に(ついに!)会えて嬉しいわ。この素晴らしい国にはずっと憧れていて、やっと住めるチャンスを貰ったという感じだったの。

夫が米国軍に所属していて、つまり色々な国に移動があるのだけど、日本に来るのは二人とも特に楽しみにしていたし、決まったときやった!という感じだった。日本語や文化についても来る前から勉強したわ。日本の編み物の素材やデザインの美的センスを見る度に感心していたので、興味があったの。この3年半は本当に思い出深い経験だったので、帰らなければならないのが悲しい。最初は西洋人の目で見ていた日本だけど、今では去りがたい第二の故郷になった気分。またいつでも戻ってきたい!

amirisu: 日本での経験が素晴らしかったと聞いて本当に嬉しい。けど、もう帰っちゃうなんて寂しいね。デザイナーとしてのキャリアについて詳しく聞く前に、まず編み物を始めた経緯について教えてくれる?

オルガ: 私はドレスメーカーの家庭で生まれ育って、編み物も4歳の時に母に教わったんだけど、高校くらいまでは特に真剣に編んだりはしていなかったのよ。でも洋服の選択肢が全然なかったから、自然と着るものを作るようになった。冬は特に寒いので、ファンキーでおしゃれなニットがどうしても着たくて。

当時のベラルーシには編み物本やパターンが存在していなくて、自分でデザインするしかなかったの。そのうち図書館にドイツの雑誌が1冊だけ入るようになって、街の女性の半分がそこから編んでいたと思うわ。

夫の軍の仕事でイタリアに引っ越したとき、再び編み物を始めたの。仕事はできないし、どこへも行けないし。イタリアだから、それも悪くはないけどね!そこで、ありふれた小さな毛糸屋さんを見つけて、糸を買っては色々と試しながら編んでみるという日々が始まったの。色々な素材や種類の糸について詳しくなっていき、結局、毛糸屋さんに通いづめることになっちゃった。

真夏のビーチで100%ウールを編んでいたときの幸せなことといったら!そのころからオンラインの毛糸ショップが増えてきたので、編み物道探求にますます拍車がかかったの。

amirisu: イタリアのビーチでビキニを着て編み物(笑)!

それで、もともとは何をしていたの?デザインやファッションを勉強したの?

オルガ: もともとは言語学と英語教師の資格をとる勉強をしていたの。でも母が仕立ての仕事をしていたから、その仕事ぶりを見て学んで育ったし、ティーンエイジャーのときパターンを起こすお手伝いもしたわ。それで洋服の構造やドレープについて学んだの。ファッションにはいつも興味があったし、新しいスタイルを見るのが大好きなので、流行レポートは必ずチェックしているのよ。

amirisu: 随分長い間デザインをしているっていうことなのね。最初のデザインしたもの、なんでデザインしようと思ったのかなど覚えてる?

オルガ: 思い出す限りでは、最初にデザインしようとしたのは高校の時で、細くて柔らかい白のアクリル毛糸を使ったセーターだったと思うわ。ストライプとケーブル模様が入ったセーターなんだけど、ゲージが緩すぎ、伸びて長くなっちゃった。当時はパンクな格好をする年頃だったのね、色は薄い色だったけど。ティーンエイジャーだから新しい洋服が欲しかったけど、編みたいパターンが手に入らなかった、というのが動機ね。

amirisu featured @ Olga Buraya=Kefelian

 

amirisu: デザインし始めた頃の経験はどうだった?

オルガ: パターンを書くというのは、また全然違うレベルなの。パターンを書く自分のスタイルを完成させて、コツを身につけるまでには何年もかかった。最初のパターンはたしか13ページくらいあって、段ごとに冗長な説明をしていたものだわ。思い出すと身震いする!今でも新しいパターンを書くごとに、少しでも上達しようと努力しているわ。

amirisu: 新しいパターン、沢山書いているしね!いつもユニークなデザインばかりだけど、どうやって着想を得ているの?新しいデザインをするとき、どんなところから始めるか説明してもらえる?

オルガ: とても観察眼があるほうなので、周囲のささいなことからでもインスピレーションを貰えるの。通りのタイルの模様だとか、誰かが着ている洋服のディテール、日本に引っ越してきてからは特に。人々や建築、細部まで行き届いた気配りには驚くばかりだわ。

着想を得たら、それをモチーフとして編み目で表現するため、納得が行くまで何度も試し編みを繰り返す。そのあとで、モチーフが一番活きる構造を考えるの。洋服になることも、小物になることもあるわ。

amirisu: 一番気に入っているデザインはどれ? 特に思い入れの強い、「イメージ通りに出来た」というような作品はある?

オルガ: そうね、毎回納得が行くまですごく時間をかけるので、自分のデザインは全部好き。

でも特に気に入っているのは最近デザインしたもので、Brooklyn TweedWool People 4というコレクションのためにデザインしたKenzoカーディガン。それと自分のサイトで発表した2つのスカーフかな。日本文化から着想を得て、落雷矢羽根という名前なの。両方ともどちらかというとコンセプト優先のデザインだけど、イメージした通りに出来上がったと思うわ。ファッションアイテムとして、実用的でもあるしアクセントにもなるし。だからとても満足よ。

amirisu featured @ Olga Buraya=Kefelian
amirisu featured @ Olga Buraya=Kefelian

Photo courtesy of Brooklyn Tweed

amirisu: オルガがいかに日本の美から影響を受けているか、強く印象づけられた作品が矢羽根だと思うの。その次に落雷が来て!試し編みは本当に大変だったんじゃない?

話を聞くといつも編んでるけど(笑)、家事や家族との時間と仕事をどうやってバランス取っているの?家族は協力的?

オルガ: 夫はとても理解があるの。週末一緒に出かける時でさえ、たしかに私いつも編んでいるけど(笑)。彼の仕事が理由で私たち移動をすることが多くて、でもそれがニットの仕事をする上では却ってちょうどいい。フリーランスだから常に仕事をしているし、編んでない時間でさえ頭の中でデザインを考えているわ。

最近は本当に忙しい。編むものも山ほどあるの。生活と仕事のバランスを取る方法はまだ模索中よ。

amirisu: デザイナーで尊敬している人、好きな人はいる?

オルガ: 素晴らしいデザイナーは沢山いるから、数人の名前を挙げることは難しいけど、個人的にはノラ・ゴーンのクリエイティビティや仕事のスタイルを尊敬している。幸運なことにジャレド・フラッドとも一緒に仕事できて、その審美眼や完璧主義なところにとても刺激を受けているわ。Quince&Co.で素晴らしい仕事をするパム・アレンもね。

素晴らしいデザイナーの方々から学ばなきゃならないことはまだまだ沢山あるの。これからも頑張って、楽しく気の利いたデザインをしていきたいわ。

amirisu: 編み物以外では何をしているの?ほかに趣味は?

オルガ: 今のところ仕事に明け暮れている毎日だけど、編んでいない時は出来るだけ外に出るようにしているの。アメリカに戻ったら、暫く会っていなかった友達とも時間を過ごすつもり。だから人と会うのも好き。時間があれば自転車に乗ったりハイキングをしたり。編むときはオーディオブックを聴くことが多いの。2つのことを同時にできるでしょ。

日本を離れたら、「日本を恋しがる」っていうのも趣味になるかもね。代々木公園や原宿の竹下通りで人間観察をして、いつもインスピレーションを得ていたの。

amirisu: 本当に寂しくなるわ。もっと早くに会っていれば良かったね!

最後の質問。夢はなに?編み物でもそれ以外でも。

オルガ: なんて面白い質問なの!そうねー、わたし現実的なので、夢というか「こうありたい」と思うのは、常にインスピレーションを持ち続け、他の人を触発しつづけ、つねに前向きにクリエーションを続けることかな。

知的好奇心が旺盛だから、この広大な編み物の世界について学び続け、その知識を他の人にも教えていきたいと思う!

amirisu: これからも素敵なデザインを楽しみにしているわ。そして、また日本で会うことも!

 

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Mokomoko Cowl. Photo courtesy of amirisu.

 

All photos, except otherwise noted, by Olga Buraya-Kefelian