デザイナーインタビュー
Kirsten Johnstone
初出: 2014年 amirisu 4号
Interviewed by Meri
All photos by Kirsten Johnstone
本号では、建築家として現役で活躍する、またはその経験のあるデザイナーの方々と複数のコラボレーションが実現しました。キルステン・ジョンストンはそのひとり。建築やアート、さらに日本から発想する彼女のデザインについて聞きました。
amirisu:キルステン、こんにちは。インタビューに時間を取ってくれてありがとう!まず、いつもパターン名に日本語を使っているのが気になっているのだけれど、日本に住んでいたことがあるの?
キルステン:日本にはずっと長い間興味を持っているの。日本との最初の繋がりは、建築を大学で勉強していたとき。日本の伝統的な建築や木造建築について調べていたの。そこから日本の伝統的な芸術や工芸、藍染め、歴史や着物にまで興味が派生して。2000年には夫と一緒に日本に旅行する機会があってラッキーだったわ。また行くチャンスがあれば、といつも楽しみにしているの。
amirisu:そうなのね!是非日本に来てほしい。楽しみにしています。もうひとつ気になっていたのは、建築家でありながら、ニットのデザインもしているということ。この2つは衝突することがある?それとも補完しあう関係?
キルステン:両方ね!大抵は補完しあうほうが多いと思う。ニットのデザインでは、手を使うことができる。これは建築家としての毎日ではあまりチャンスがないの。色々な設計事務所で働いたけれど、手を動かす機会がなくて、なんで建築なんて勉強したんだろうって思うこともしばしばだったわ。
ただ、仕事以外で絵を描いたりエッチングをしたりするのが好きな上司が1人いたの。仕事以外に創造的な趣味を持てるんだということが、当時の私にはとても新鮮で、その上司にエッチングを習うことにした。その後すぐに陶芸を始め、裁縫や編み物も再開して。そのうち、建築家としても1人でやったほうが、クライアントと直接コミュニケーションを取れるし、もっと個々に合わせた設計ができると気付いて独立したの。
正直なところ、2つの仕事が衝突するのは、ニットのデザインを仕上げたい時にコンピューターでの設計に戻らなければならないときだけね。
amirisu::色々なものを作っているけど、どれを取っても独特のスタイルがあるように見える。何にデザインの影響を受けたの?
キルステン:いい質問ね。そして難しい!
デザインするときにはいつも実用性を重視しているわ。ミニマルな見た目が好き。エレガントでタイムレスなもの。自分の時間やエネルギー、材料に関しても、無駄をできるだけ省きたいと努力している。
あとは、ごてごてしたものが嫌いなの。
ニットウェアに関しては、体型にフィットし、スタイル良く見えるデザインをしたいと思っている。エレガントでタイムレス、色々なスタイルで長い間着れるものね。自分がデザインしたものを着るのが好き。どれもとてもパーソナルなものだし、長い時間一緒に過ごしている間に愛着が湧くでしょ?
amirisu:ということは、自分が着たいと思うものをデザインしているってことかな。どうりで、どれもよく似合うはずだわ!
編み物以外にも色々なものを作っているよね。クラフトにはずっと興味があったの?
キルステン:ええ、母は私が幼い頃から裁縫をするようにしむけてくれた。彼女は自分で洋裁を学んで、それを私に教えてくれたの。とても感謝しているわ。それ以外にも、裁縫、編み物、写真、陶芸、版画(エッチング、リトグラフ、スクリーンプリントなど)、ジュエリー、木工など、様々なクラフトを試してきたのよ。
amirisu:興味の幅が本当に広いのね。すごく共感できる。創作のインスピレーションは何から来るの?何がそうさせるのかな?
キルステン:良く聞く答えだけど、私も周囲の環境に影響を受けると思う。自然、人々、雑誌、映画、ウェブサイト、糸や生地の素材感。時には、建築から影響を受けることもある。建物が落とす影の形、建材の素材なんかにインスピレーションを得たり。
amirisu:建築といえば、好きな建築家は誰?設計者としては誰に影響を受けた?
キルステン:沢山いるわ!その中で、総合的に尊敬している数人だけを挙げてみるね。
グレン・マーカットの設計のシンプルさが特に好き。彼の「地面にそっと触れる」というコンセプトに、デザイン的にも環境への配慮という点でも共感できる。
ピーター・スタッチベリーの「建物を解体して、基本のエレメントに戻し、将来のリユースを可能にする」というコンセプトは非常にクレバーで、実用的ね。
ピーター・ズントーの素材使いとミニマルな美的センスは、本当に美しいと思う。
ブライアン・マッケイ=ライオンズの「シンプル、プレーン、モダン」というコンセプトの説明—「モダニズム建築に使われていた無加工の素材を洗練させ、エレガントな究極のシンプルを実現する」—に惹かれるの。このアプローチを自分のデザインにも取り入れたいと思っている。編み物、洋裁、建築のいずれにもね。
amirisu:グレン・マーカットとピーター・ズントーは私も好きです。ミニマルで、かつ素材を活かしたアプローチは、キルステンのデザインにも通ずるものがありそうね。
最後の質問。これからチャレンジしてみたいことはなに?5年後には何をしているかしら?
キルステン:それに答えるのは大変だわ。性格的に、ルーチンや整理整頓が好きな質なので、あまり大きな計画を立てるのには向いていないの!
現状では、子供が一番の優先ね。
概していえば、このままニットウェアのデザインを続けながら、どんなチャンスが訪れるのかを楽しみにしているわ。今のところ、色々な挑戦やプロジェクトをとても楽しんでいるの。 正直5年前の自分は、ニットウェアのデザイナーになっているなんて、そして日本のオンライン雑誌と仕事をするなんて想像もしていなかったわ!
amirisu:あはは、本当だわ。では少なくとも、これからもキルステンの素敵なデザインを楽しみにできるっていうことは確かということね。