デザイナーインタビュー
Gudrun Johnston & Ysolda Teague
初出: 2012年 amirisu 2号
Interviewed by Meri
今号のデザイナー・イン・フォーカスでは、とてもスペシャルなゲスト、グドラン・ジョンソンとイゾルダ・ティーグのお2人のお話をお聞きしました。
グドランはQuince & Co.からKnit With Meという素敵な電子書籍を出版したばかり、そして今号のamirisuのためにNinianというプルオーバーをデザインしてくれています。イゾルダはご存知のとおり、何冊ものパターン本やテクニック本を出版するかたわら各地で教鞭を取り、「パーフェクト・フィットのセーター」を編むことにかけてプロ中のプロ!そんな2人がどのようにデザイナーになり、デザインの発想を得ているのか、聞いてみました。
インタビューは2012年10月にイタリアで開催されたSquam Art Workshops (Squamitalia!)にて、45分間にわたって行われました。
インタビュー:グドラン・ジョンソン
メリ:グドラン、あなたはシェットランドで生まれ育ったと聞いたんだけど、生い立ちやシェットランドとの繋がりについて教えてくれる?
グドラン:もちろん。 私の両親は60年代にシェットランドへ引っ越し、4人の子供は皆、その13年の間にシェットランドで生まれたの。そこで母は1971-72頃シェットランド・トレーダーというニットウェアビジネスを始めてね、彼女はデザインに専念して、編む部分は地元のプロの女性たちに任せていた。メリヤス編みの部分は機械を使ったりもしていた様子。オーダーメードのセーターを作っていたらしいの。
私が小さい頃はまだこのビジネスは続いていたんだけど、当時は何がなんだか。それでも、子供の頃よく私や兄弟が母のブランドのモデルをさせられていたのは良く覚えているわ。
でも4歳のときに家族はシェットランドからスコットランド本土に引っ越して、私は殆どそこで育ったの。ティーンエイジャーのときに編みものを覚えたんだけど、本格的に編み始めたのは夫とマサチューセッツ州に引っ越してから。ずっと編んでいなかったから、まったくの初心者から始める感じだったんだけど、最初のプロジェクトですっかり夢中になってしまったの。こんなに面白いものがあったんだ、と思ったわ。その地域には良い毛糸ショップが沢山あったし、編みものをしていた人が多かった。それが8年くらい前。
メリ:あら、結構最近なんだ。
グドラン:そうなの。止められなくなって、それは沢山編んだわ。その後すぐにデザインを始めたわけではなくて、ただ自分に合うようにパターンに色々変更を加えて編んでいたの。
メリ:そこからどうやって仕事としてデザインするようになったの?
グドラン:最初の経験は、娘のために適当に作ったスカートなんだけど、あるときKnittyに投稿してみようと思い立って。締め切りまで日がなかったから、とにかく急いで提出物を作ったの。2−3日PCにかじりついて初めてパターンを書くという体験をし、娘をモデルにして写真を撮り、さあどうなるかな、と思いながら送信。選ばれたときには嬉しかったけどビックリしちゃった。そのとき、「ブログがあったほうがいいかも。」と思って。リンクしたいんだけどブログある?って良く聞かれたし、なら始めよう、って。そのブログを、母がやっていた会社の名前、シェットランド・トレーダーと命名。それがすべてのはじまりね。
イゾルダはすでに有名でブログを書ていたわ –彼女も似たような経緯の持ち主よ。(イゾルダ:私の話はあとよ!)
はいはい(笑)。イゾルダは私が最初にコンタクトした人なの。同じスコットランド出身だからかな。それにKnittyで既に出ていたし。ブログをやっていた他の人たちとも、オンラインでコミュニケーションを取りはじめて。経験のなかった私に色々と教えてくれたり、アドバイスをくれたりした人たちのお陰で今があるという感じね。
メリ:ということは、ある日「デザイナーになろう」と決めたというわけではないのね。
グドラン:ちがうわ、デザインでお金を稼ごうと別に決めて始めたわけじゃないの。タイミングが良かったのね。Ravelryもその後すぐに始まったし、それでオンライン上で編みものの話をしたり新しいパターンを探したりする人が一気に増えたから。今の私に大きく影響を与えていると思う。
仕事と呼べるようになり、真剣に取り組むようになったのは、ほんのこの2~3年のこと。教えるようになってから、まともな収入になるようになったから。
メリ:シェットランドの伝統的な編みものからデザイン的に影響を受けていると思う?
グドラン:ものすごく。デザインを始めた当時、自分の得意分野というかニッチがあったほうがいいな、と思ったの。既にデザイナーは大勢いたし。だから自然とその方向へ向かったわ—私は編みものとシェットランドの伝統に興味があったから。母がやっていたのはフェアアイルを使ったデザインだったけど、私はシェットランドのレースの方に惹かれた。今でも影響を受けていると思うわ。
メリ:なるほどね。これまでにデザインしたなかで一番のお気に入りは?
グドラン:今のところ、一番納得がいく仕上がりになったのはLaarという極細糸を使ったカーディガン (http://www.ravelry.com/patterns/library/laar)かな 。スケッチしたアイデアが思い描いた通りに出来上がったという点で。それは中々起こることじゃないのよ。
Photo by Jared Flood
メリ:そこで今日の一番聞きたかった質問になるんだけど、デザインのプロセスについて教えてくれる?
グドラン:時と場合によるかな。雑誌やオンライン・マガジンの場合、大抵既にどんなイメージやデザインが欲しいかということが決まっているし、色も選べなかったりするの。だから先ず枠組みが決められて、その中で仕事をする感じ。でも自分自身のためにデザインする場合はそんな枠組みがないから、特に気になる糸や色から始めることが多いわね。スウォッチを色々編んでみて違う編み方を試してみたり、そして気に入ったものを選ぶの。それによって何を作るかを決めたりもする。
お気に入りだと話したLaarの場合、毛糸ショップでコーン巻きになっている毛糸を見つけたの。その色が余りにも素敵だったので、これで何を作れるかな?と考えはじめて。太めの針でスウォッチしてみたら、柔らかくてドレープのあるテキスチャに仕上がったので、なにか繊細なもの、カーディガンなんかがいいんじゃないかと思ったの。そこで大抵スケッチをするわ。
時には誰かが着ているセーターの形に惹かれたりもする。セーターじゃなくて他の種類の衣類のネックラインだとかシェイプだとか、そういったところからアイデアをもらったりもね。
また一方では、最近のことだけど、自分のコレクションを作る際、母親と娘のためのコレクションにしたら面白いと考えたの。母と娘と一緒に着れるけど完全にお揃いというわけではない、年齢に関係なく楽しめるようなもの。それは一種の枠組みを自分で決めたことになるわね。なぜなら、うちの娘が絶対着ないというものは載せられないから。つまりコレクションみたいなものを作る場合は、プロセスも異なるの。
毎回臨機応変にやっているわ。
メリ:まずはスウォッチから始めるところは大体同じ?
グドラン:そうね、スウォッチを編んだり糸を選んだりするところから始めるのが普通ね。その後スケッチ。 スケッチしたアイデアがすべて上手く組み合わさって完成品になることも時々あるけど、普通は色々と変更を加えていくわ。うまく行くと思ったアイデアが思い通りにならなかったり、もっといいアイデアを途中で思いついたりね。
メリ:でもそれで、グドランのデザインを見て感じたことに納得がいく。いつも毛糸の質感を上手く活かしたデザインをするな、と思っていたの。特に、ウールらしさを活かしたデザインっていうか。最初にデザイン画を書いて、その形を手編みで作った、っていう感じではないなと思って。
グドラン: それはすごく正しいと思うわ。毛糸の質感から完成したウェアのシェイプやテキスチャを導きだすの。
メリ:最後に、尊敬するお気に入りのデザイナーを教えて下さい。
グドラン:あら、沢山いすぎる!当然イゾルダでしょ(笑)。ジャレド・フラッドのシンプルさと写真の表現が好き。ヴェロニク・アヴェリー、それからオルガのユニークさ、クリステン・ジョンソン(Assamblage)も好き。
Photo by Ysolda Teague
インタビュー:イゾルダ・ティーグ
メリ:イゾルダ、あなたのお気に入りは?
イゾルダ:編みもの特有のデザイン・アプローチをするデザイナーが好きなの。見た目素敵なデザインをする人は沢山いるけど、私が一番面白いと思うのは、スティッチパターンと衣類の構造の関係性を模索している人たち。
例えば、ノラ・ゴーンのデザインはいつも何かしら新しい面白さがあって、編むのが楽しい。あとケイト・ギルバート、Cookie A.が思いつくわ。Cookieがセーターのデザインを初めて嬉しい!もう最近では忙しすぎて他のデザイナーを以前のようにはフォローしてないけど、Ravelryの”hot right now”コーナーを出来るだけ見るようにしている。本当にクリエイティブな時代になったんだ、新しい面白いアイデアを持った人が沢山いるな、っていつも思う。
メリ:イゾルダは編みもののテクニックにすごく精通していて、方々で教えているって聞いたんだけど。その知識はどうやって学んだの?
イゾルダ:写真記憶ができるからかな?っていうのは嘘だけど、教科書を丸暗記して「テストは楽勝」なんて言うような厄介な子供だったことは確か。
編みものを始めた当初は他のニッターを殆ど知らなかったから、沢山本を読んで色々試してみるしかなかったの。すごく古い本も中にはあって余り初心者向けではなかったけど、今みたいに初心者向けや上級なんて分け方もなかったから色々読んだわ。でも編みものに真剣になったのは、様々なテクニックを使ったり構造を工夫してみたり、ということを通して本当に色々なことができると分かったから。パターン通りに編むのはそもそも得意ではないし、単純な形をしたものを編みながら編み目を工夫するところに興味があったの。いつも新しい知識を探していて、世にある編みものの技術本は多分全部読んだと思う。
メリ:えっ、ホント??
イゾルダ:うん、全然驚くところじゃないよ、私何かに夢中になると本当にオタクっぽいから。最初から終わりまで、小説を読むように最低2回ずつは読んだはず。そして編みもの本の歴史や内容の変遷も語れると思う。模様編み辞典を読んでいた時期もあるよ、それもパラパラめくるんじゃなくて、指示を全部細かく読むの。かなりヤバい人間でしょ(笑)
覚えているのは、小学生の時って何かの説明文を書いたり、物事の仕組みを図解したり、っていうような宿題があったでしょ。それが大好きだったの。高校では物理の先生が物事の仕組み(たとえば電池の仕組み)を一番少ない文字数で説明した人が勝ち、っていうコンテストをやっていて、私いつも一番だった(多分他に誰もそんなことに興味がなかったからだと思うけど。。笑)。電池の仕組みを19語で説明しよう!どの言葉が省けるか?簡潔なんだけど意味が通じる説明にするにはどうしたらいいか?必死で考えて書き直したからね。
だから、編みものに興味があったっていうだけじゃなくて、デザインをし始める以前からパターンってどうやって説明されているかなっていつも考えていたの。デザインが好きでパターン書きは嫌いっていう人が多いかもしれないけど、私にとってはそれが一番楽しい部分ね。まあ面倒なことはあるけど。
それに、他の人のパターンで編んだことは殆どない。指示通りに編むのって得意じゃなくて。帽子1つとセーターをいくつかパターンから編んだけど、ちゃんと最初から最後まで指示に従ったのは1つだけ。それ以外は自分で考えながら編んだ。
当時覚えているのは、セーターをパターン通りに編みはじめて、減目のところがどうしても納得がいかなかったの。もっといいやり方があるのにな、って。でもきっとデザイナーにはちゃんとした理由があって、編んでいるうちに納得いくに違いない、と思って編み続けた。けど、結局理由が出てこずに最後までいっちゃった。結局私がこうした方がいいと思った方法の方が優れていると分かった時、怒りが込み上げてきたよ。そもそも理由なんてなかったんだって!
だから私が教える時は、生徒に自信を持つようにと言っているの。時には編み手である生徒さんの方が正しくて、デザイナーより経験がある場合もあるんだからって。こっちが間違っている場合も勿論あるけど、そしたらほどけばいいだけだしね。それも経験のうち。
メリ:それがデザインを始めたきっかけ?
イゾルダ: それまでも自分のためにデザインはしていたわ。パターンは書いていなかったけど。グドランときっかけは似てるの。Knittyにパターンを提出したんだけど、まあ当時はKnittyを見ている人がいるのかさえ分からなかった。編みものができる人は知ってたけど、私みたいにオタクっぽく編みものにハマっている人っていなかったから、Knittyで同士を見つけたときには最高に嬉しかった。 とはいえ、最初の何号かはいつも同じようなデザイナーが投稿している感じで、編みもの人口って20人くらいかな、って思ってた(笑)。
提出のガイドラインをみると「Wordファイルと写真を送って下さい」と書いてあった。デジカメは持っていなかったから、普通のカメラでお母さんに自分の写真を撮ってもらって、スキャンしてKnittyに送ったの。
セーターを編んだのはそれが3つ目くらいで、パターンの書き方なんて全く知らなかったのよ。パターンっていうもの自体、よく分かってなかった。Rowanかそれともすごく古い本に載っているようなものしか見たことがなかったから、帽子以外に何かそれで編もうとは思えなかった。計算の仕方や式も知らなかったし本もなかったから、方眼紙を取り出してサイズ別に袖を全部書いて、マス目を数えてパターンを起こしたの。1つのサイズが終わったら、はい次、って感じでね。すっごく時間がかかったけど、何とかなったわ。 最高のパターンではないけど、役目は果たしている。
メリ:じゃあ、本を沢山読んだっていうのはその後なんだ?
イゾルダ:うん。当時も探してはいたけど。でもイギリスでは本は殆ど手に入らなかった。多くは絶版で。袖山の計算の仕方はKnittyの記事で学んだの。
それから、Knittyにブログのアドレスを教えて、って言われてブログを始めたの。それまでもクラフト系のブログを良く読んでいたけど、きっかけはそれ。6月くらいに始めたんだけど、最初の数ヶ月は周りの友人が時折見ていただけ。それが9月のある朝、目が覚めてみたらブログの訪問数が何千にもなっていて、ビックリ。何ヶ月も誰も見てなかったから、ハッキングでもされたのかと思った(笑)。それがKnittyが出た日で、私のデザインが表紙になってたの。「Knittyのパターン素敵ね、他のデザインはないの?」って問い合わせが沢山来て、「ああ、編みもの人口は20人じゃなかったんだ」って(笑)。その日がデザイナーになった日よ(笑)。
メリ:一夜にして、だね。
イゾルダ:当時は結構、訳が分からずやっていたわ。テクニカル編集について何も知らなかったから、Knittyで働く女性から「この数字間違ってないかしら」って連絡があったときも、「誰だろう」くらいにしか思ってなかった。テクニカル編集の人を雇いもしなかったし、できるとも知らなかったから、最初のパターンはホント間違いだらけ。優しい人たちが親切に間違いを指摘してくれて。
でも、今はそんな風にデザイナーになることは不可能よ。基準が変わってしまったから。それに、私の考えでは、パターンを書いてPDFを販売しながら、テクニカル編集が何かを聞いたこともないなんて、そんな言い訳は通らない。Ravelryのデザイナーグループや、本や、その他の参考資料が沢山あるしね。
当時の私のお客さんたちはとても優しくて、何か新しいことにチャレンジしている人がいるっていうことをとっても喜んでいたし、間違いを指摘したらすぐ直してくれることに満足していた。もっと直な関係を築いていたとも言えるかな。既存の出版の枠組みから外れてデザイン活動をしていた私たちとね。
そんな感じで学んでいったんだけど、まあ、みんなにお勧めできる方法ではないかも。 今でも嬉しいのは、私のブログを最初から読んでいてくれている人に時々出会うことよ。
メリ:つまりイゾルダは数学が得意で、沢山本を読み、自分でデザインの仕方を習得したってことね。すごい。
デザインのプロセスについても教えてくれる?
イゾルダ:プロセスの大部分は、最終的には何も完成できなくて自分が時間を無駄にしているかもしれない、っていう気持ちをどうやって克服するかっていうことだと思うの。アイデアがあっても、1回じゃカタチにならないかもしれない。2回目でもダメかもしれない。そうやって失敗を繰り返しながら、3度目には素晴らしいものが出来るかもしれない。
デザイナーになりたいんです、って人に相談されるたびにまず質問することは「ほどくの好き?」ってこと(笑)。編みものをする人ってほどくのが嫌いじゃない。ほどかないためにどんなことでもするでしょう?(笑)それに、ほどいたりするのが嫌だから難しいことに挑戦してみない人までいる。でもデザイナーになりたかったら、そこを克服しないとだめよ。好きになる必要はないけど、ほどくことを受け入れないと。
メリ:デザインはどこから始めるの?スケッチ?毛糸?
イゾルダ:スケッチはしない。絵を描いたりするけど、色々付け加えて重ね描きしているうちにぐちゃぐちゃになっちゃう。スケッチするとしたら、出版社との遣り取り目的だけね。
こんな感じで手の込んだスウォッチを編むことのほうが多いな。(このときイゾルダはすごい形をしたスウォッチを編んでいたんだけど、仕事用だから写真を撮らしてとは頼めなかったの。お見せできず残念!)使ってみたいテクニックや編み模様があったり、構造やシルエットのアイデアがあったり、気になる毛糸があったりするので、それら全部をスウォッチで統合するの。
デザイナーによってはもっと整理されたステップがあると思うんだけど、私の場合は色々な要素をひとつにまとめることがプロセス。編集に近いかな、削っていく作業っていうか。
メリ:実験的なデザインっていう感じ?
イゾルダ:そうかもね。
メリ:これまで読んだり試したりしたアイデアが沢山自分のなかに蓄積されていて、それを組合わせているイメージなのかな。
イゾルダ:うん、そしてそれは時間がかかることもあるよ。あるアイデアを試してみたんだけど気に入らなくて、3年後にふと取り出してやってみたら「あら、これいいアイデアだったんだ!でもこの模様は合わないね。」っていうことがあったり。
メリ:なんか納得するな。イゾルダがデザインしたRose Redを編んだけど、複雑な模様と帽子の形が面白くフィットしていて、上手くできてるなと感心したの。
イゾルダ:増減目のあるただの縄編み模様だけどね。でも、そうね、模様と立体的な構造を合わせるのが好きね。
デザインの勉強の仕方やデザインを教える学校について教えて欲しい、っていう質問を良く受けるんだけど、そんなのはないと思うよ。デザイナーが主催するワークショップに参加したりするくらい。服飾専門の学校でも、ニットウェアについては6週間くらいのコースがあるだけで、しかも機械で平らなパーツを作る商業デザインでしょ?役立つ知識はあるかもしれないけど、それじゃあ全然足りないでしょ。手編みパターンの書き方も習わないし、手編みで威力を発揮するテクニックは機械編みには応用できないことが多いし。でもそんなテクニックがあるからこそ、手編みが面白いからね。
ということは、デザイナーを目指したいと思っている人にとってとても勇気がでることだと思わない?誰も学校で勉強なんかしてないっていうこと。ファッションや商業ニットのデザインを勉強した人はたまにいるけど、殆どの人がユニークな方法でデザイナーになった。関係ない分野の博士号を持ちながらニットウェアのデザインをしている人もいるしね。私も編みものがダメだったら大学に戻ろうかな、とか思ってる(ただ何を専攻するか永遠に決められなそうだけど!)。
色々なクラスを取ったり、本を読んだり、実験してみたりしてデザイナーになった人が殆どよ。今はネット上などに参考になる資料などが沢山あるから、もっと簡単だと思う。と同時に、求められるレベルも上がっているのがちょっとコワイけど。
メリ:趣味として楽しみで編むことはある?
イゾルダ:滅多に。だって、暇な時間が殆どないからね。でも仕事だけどいつも編んでいるし、編むのは好きよ。編まないでぼーっとしているなんてできない。
グドラン: 映画を観ながら編んでないなんて、すごく変な感じする(笑)。
メリ:まったく同じ!
グドラン:ひとつ編み終わったとき、次の計算が終わってないとかで即座に編むものがないと、ちょっとイライラしちゃうわ。
イゾルダ: そうそう。そんな時はスウォッチとかを編むよ。最近仕事場を家から外に移したから、家では仕事以外のものを編みたいなと思ってるんだけど。でも家にはまだ大量に毛糸がある—リネン・クローゼットにはタオルと毛糸が入ってる(笑)。他に入れるところがなくて。
メリ:何を編むのが好き?
イゾルダ:あまり靴下を編むのは好きじゃないけど、それ以外なら何でも。セーターを編むのが好きなのは、袖の計算とか綴じ接ぎをせずに編んでいられる時間が長いから。そして、メリヤス編みが実は好きなの!縄編みを使ったデザインをするのは好きだけど、自分で編むのには何度も手元を観なきゃならないから嫌ね。レースやかメリヤス編みだったら、一旦リズムを掴めばずっと編み続けられるでしょ。
メリ:今日は本当にありがとう、2人と話せてとても面白かったし、すごく勉強になったわ!