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山形市から車で約15分の隣町、山辺町にあるオリエンタルカーペット株式会社。日本で唯一、糸づくりから製品のアフターメンテナンスまでを一貫して手がけ、「山形緞通」というブランド名で高品質なじゅうたんを作っています。
その歴史は、地域の女性たちに働き場を提供するという創業者の思いから始まりました。1935年に北京から7人の技術者を招いて2年かけて技術を学び、以後は日本の美意識やデザインを取り入れながら発展してきました。山形緞通のじゅうたんは、皇居や京都迎賓館、帝国ホテルや歌舞伎座など国内外の名だたる施設に納められている高級品ですが、近年では一般の家庭向けの製品にも力を入れています。本社・工房を訪れ、常務取締役の渡邊篤志さんにお話を伺いました。
訪れてまず驚いたのが、薄ピンクの屋根と茶色の木の壁が印象的なかわいらしい古い建物群。昭和20年代に建てられたもので、屋根の色選びや窓が多く明るい設計にも、女性たちが少しでも心地よく働けるようにという創業当初の願いが現れています。ヒマラヤスギが植えられ、北欧のような雰囲気も漂うこの敷地内で、糸の染色から織り、仕上げまでの工程が完結しています。
山形緞通のじゅうたんには、「手織り」と「手刺し」の2つの製法があります。
手織りは北京の技術者から学んだ伝統的な手法。織台に綿の縦糸を張り、原寸大の方眼紙のような図面に合わせて毛糸を一本一本結んでは切り、少しずつ織り上げる根気のいる仕事です。私たちが訪れたとき、職人さんは80cm幅のじゅうたんを織っていましたが、一日に進むのはたった数センチだそう。織目の密度がとても高く、100年使用できるほどの耐久性があるというのも納得です。
もう一つの手刺しは綿布にフックガンという専用の工具で糸を打ち込む手法で、昭和中頃から始まりました。手織りより早く大量に生産することができますが、手織りに迫る高い品質を追求しており、そのデザインの幅や美しさ、耐久性を兼ね備えた仕上がりは他社の追随を許しません。職人の人数は手織りが7人、手刺しは30人ほど。最近は山形県外から移住してくる若者も多いといいます。
織った職人自身が仕上げも含め、最後まで担当するというのが山形緞通のやり方。仕上げでは、シャーリングという専用の工具で表面が均一になるまで切り揃え、整えていきます。さらに、表に出ず埋もれてしまっている糸をピンセットで起こしたり、模様が浮き出るようにカービングしたり、丁寧な作業が求められます。じゅうたんの「里帰り」として、4~5年ごとに洗ったりメンテナンスしたりするアフターサービスも充実しています。
山形緞通のじゅうたんの特徴は、こういった高品質の製造方法に加え、繊細で美しい色。クライアントから細かく希望を聞き取り、自社で色を作っていきます。イギリスやニュージーランドから毛糸を仕入れ、国内の提携工場でオリジナルの太さの糸を作り、山辺町の工房で染色します。工房にはこれまでに作ってきた2万色以上のレシピがありますが、毛糸は入荷時期によって品質が微妙に異なるといい、その調整にも高度な職人技が必要です。複数の色を割合を変えながら組み合わせることで、複雑なグラデーションや、じゅうたんらしいつぶつぶ感を生み出します。たとえば「NEW CRAFTON」という無地シリーズは、一見一色に見えても、同系色を2色混ぜて奥行きを出しています。
「じゅうたんは冬のものだと思われがちですが、夏でも快適にお使いいただけます」と、渡邊さん。暖かさだけではなく、実は冷気も取り込んでくれるので、冷んやりとした足触りを楽しめるそう。
NEW CRAFTON
山辺町の工房は見学可能。(※要予約)https://yamagatadantsu.co.jp/showroom/
現場を訪れることでその魅力をより深く感じることができるはず。ショールームも併設されており、じゅうたんを実際に触ったり座ってみたりすることもできます。手に取りやすい価格の小さなものもあります。
ぜひ訪れて、山形の風土と人の手が生み出すじゅうたんのぬくもりを感じてみてはいかがでしょう。
Access
〒990-0301 東村山郡山辺町山辺21023-664-5811
Website: https://yamagatadantsu.co.jp/Instagram: https://www.instagram.com/yamagatadantsu/