Through the Lens - 29
「何度でもやり直せばいい」
そんなメッセージを植物から受け取る日々。岡山市にあるわたしのアトリエに大きなエバーフレッシュの木がある。シンボルツリーとしてたくさんの人に愛してもらい、最大で幅3mから4mほどになった。自慢の木だった。こうやって過去形で書くのが、かなしい。
冬から雲行きが怪しくなったのだ。なんだかぐったりとして葉がすべて下を向いている。焦って水をあげすぎたり栄養剤を与えたりしたのがよくなかったかもしれない。剪定のタイミングを間違えたかもしれない。
大きな植物が元気がないというのは例えて言うならば、大型犬がぐったりしてるのと似ている気がする。わたしまで悲しくなりお腹が痛いような気がしてくる。あんなに元気だったのに。
エバの調子が戻る事はなく、みるみる力をなくしていき、そしてこの猛暑でとうとう、葉を全部落とした。ただの、枯れ木になった。思い切って枝を整理し、彼(エバ)はガリガリの裸になった。見るも無惨な姿。幹を触ってみる。植物はすきだけれど「グリーンサム」ではなく、超能力も皆無なわたしは、彼が言いたいことはわからない。動物と違って熱があるわけでもないし、言葉も伝わらないから正直、どんな状況なのかわからない。
でも君は生きている。そう決めた。
時間と量を決めて、定期的にちゃんと水をあげることにする。日と風を当てる。そして話しかけて、触る。このやり方が合っていたのかどうかわからないけど、彼はある日、復活した。枝の先に元気な新芽を見つけ、つい叫んでしまった。
おかえり!
やっぱり君は生きていた!!
わたしの背丈よりも高い位置についた新芽。そこまでぐいと水を吸い上げたきみの力に感服する。
そこから葉はぐんぐん育ち、新芽もみるみる増えた。もちろんまだ、最盛期のボリュームに比べたら、まるで別人のような小ささ。でも、この生命のたくましさに励まされる。
そう、何度だってやり直せばいい。
全部ダメだって何度でもやり直せばいいよね。