そのバレエ教室は恐らく夫婦で経営しており、妻がバレエを、夫がジャズダンスのようなものを教えていたのだと思うが、発表会ではバレエ以外のダンスが見られるのも、私の密かな楽しみだった。ある時、先生と大人達が踊るジャズダンスの演目があり、そこでかかったのがSTINGのEnglishman in New York。会場中に大音量でかかるその曲に私はすっかり心を奪われ、踊っている男性陣がとにかく輝いて見えた。私にとっては、洋楽を身近に感じた初めての体験だったと思う。ジャズテイストの曲調、途中で入るドラムだけのパート。今でも帽子を被って踊るダンサーの衣装と派手なメイク、ドラムパートの時のライティングを覚えている。その頃からFMラジオを聴く習慣があったため、すぐにSTINGの曲だと判明。それから今日この時まで、Englishman in New Yorkは思い出が走馬灯のように駆け巡る私の大事な曲になった。
一昨年、STINGの日本ツアーがあり、実在のSTINGに会えるなんて!と芽理さんとワクワクしながら行った。もちろん私の大事なEnglishman in New Yorkは歌われたが、残念ながら私の頭の中の輝かしいSTINGではもうなかった。現実は私の頭の中を超えていかないということを思い知り、時の流れをまざまざと感じた瞬間であった。とはいえ、私の大事なあの歌はいつでも12歳の時の新鮮な驚きと喜びに包まれている。STING、素晴らしい曲をありがとう!