あの時私は - 卒業式後のボーリング大会
ティーンエイジャーは人生の中でもなかなかに苦しい時代だと思うのだが、私もご多聞に漏れず上手くは過ごせなかった。学校には毎日行っていたが、授業は別に面白くはなく、友達もいるにはいたが、クラスで一人ぼっちにならないように保険で作ったような、私にとってはそんな友達たちであった。
今となっては、中学3年生の時の同級生の名前は2人しか覚えていない。一人はなぜかいつも気にかけてくれた男の子、思えば私のことを好きだったのかもしれない。後一人は、私と同じ苗字だった女の子。とにかく高校生になれば何かが変わることを期待して過ごした一年だったように思う。
もうすぐ卒業式を迎えるクラスでは、式が終わった後に有志でボーリングに行く話が持ち上がっていた。その頃、グループで遊びに行くのに一番盛り上がる場所はカラオケでもなく、プリクラでもなく、ボーリングだったのだ。私はもちろんただ脇で聞いていただけだったのだが、なぜか誘ってもらえた。学校は制服だったので私服で会うのにも少し緊張したし、行くメンバーが一度も遊んだことのない子ばかりだったので上手く自分が振る舞えるか緊張したが、ボーリング自体は楽しかったような気がする。その時の自分の格好を今でも覚えており、黒いセーターにチェックの短いキュロット、母から借りた赤い珊瑚のイヤリング。あの頃気に入っていた格好だった。
そこから何十年も経ったある日、携帯電話に知らない番号で電話が掛かってきた。訝しみながら出てみると、中学校の同窓会の案内だった。以前母親が同級生に私の携帯番号を教えたらしく、それからたまに同窓会のお知らせが来るようになったのだ。電話を掛けてきた子は、「私の名前覚えてる?」と親しげに話してきたが、私は彼女の名前も顔も全く覚えておらず、世間話もそこそこに同窓会には行けないと他人行儀に告げた。
私は思ったよりも中学校で上手く振る舞えていたのかもしれない。とにかく全てが失敗だったような気がしていたのだが、ボーリングに誘われるぐらいには、きっと。彼女の明るい声を電話口で聞きながらそう思った。