6月 01, 2023

Through the Lens - Issue 26

Through the lens for amirisu by Masako Nakagawa
Through the lens for amirisu by Masako Nakagawa

 

トマトで毎日が大きく変わった。

食べるトマトも大好きだけれど、これは集中力を保つテクニックの話。

1日が終わる時にどれだけ満ち足りた気持ちでベッドに入ることができるか。限られた時間、おおげさに言えば人生の中でいかに有効に時間を使うか。ビジネスパーソンが夢中になっていそうなそんな考えに、とうとうわたしも至ることになった。仕事を始めて四半世紀以上。自分の時間管理能力の低さをとうとう認めた。1日を振り返るとあまりにも、無駄にしている時間が多すぎる。

アメリカの大学院に入り直した多忙な知人が「ポモドーロ・テクニック」とやらをSNSで紹介していた。イタリア語でトマトを意味するそのテクニックはいたって簡単。25分集中して5分休む。それを4セット繰り返す。そのあとはしっかりと休憩を取る。必要ならまた4セットやる。それだけ。これならできそうだな。取り組んでみる。

タイマーを25分セットし、ががっと集中する行為は、遠い昔の学生時代の試験を思い出す。こんなふうに時間を区切って何かに取り組むことはひさしぶり。作業中にちらっと画面の数字を見やると、まだ8分しか経っていない。けれど、この8分の濃密さよ。8分で自分が達成したことの質と量に驚く。また集中の海に戻る。タイマーが鋭く鳴る。もう、25分。まだまだできる気がする。でもここで5分きちんと休むことが大切だということだった。携帯やPCから離れ、ゆっくりとお茶をいれる。5分という時間もあっというまだ。タイマーに呼ばれまた、デスクに戻る。あたらしい25分が始まる。4セット終えた頃には、手元のto doリストが想像以上に消されている。こんなにも、進んでしまったことに驚く。赤く熟れた想像上のトマトが4つ、つやつやと転がっている。

かつて区切りのない時間の中では、だらだらと脱線してしまっていたことを思い出す。満足度の低い波に身を委ねているうちに時間は冷酷に過ぎていく。そして達成感のない、むなしい夕方を迎える。

今では「だらだらする時間」すらも予約することにしている。4セットおわったらPCを閉じ、ドラマを1エピソード見てしまう。おいしいコーヒーを淹れて、とっておきのチョコを並べて。そんなふうに特別に予約した、自分に甘い時間は格別。罪悪感など当然なく、4セット分終えた誇らしさを胸に、堂々と余暇を楽しむ。最高なきもち。

amirisu読者のみなさんは、合間の時間を上手にニッティングで埋めていることと思います。編み物の時間をより多く捻出するために、仕事や家事の生産性を高めたいと願っているならば、ポモドーロ、とてもお勧めです。

                  Masako Nakagawa