Through the Lens -32


「千里の道も一歩から」この格言のマインドをニッターのみなさんは共有しているのではないでしょうか。わたしも、ちかごろしみじみと感じています。
数年前にamirisuのメリさんとトクコさんに編み物の世界に誘われて以来、高い頂を持つニッター界の裾野にわたしもマイペースに生息中です。熱心なみなさんに比べれば大変スローな亀の如くの歩みですが、じぶんなりに編み物という行為のすごさをじんわりと感じています。
大きなセーター、長いショール、いや、大作でなく小物であっても、完成させるには、とにかくひと目ひと目編むしかないという事実がある。目の前のことにひたすらに取り組むうち、気づくと、じぶんでも驚くほどの面が出来上がっているときの喜びよ!目で手で実感できるリアルな達成。仕事や暮らしの中ですぐに解決できない問題があるようなときには、その感覚にとても助けられます。
人生のどんなことも、まずは目の前のことをひとつずつやることからしか始まらない。頭ではわかっているつもりでも、つい焦りが生まれてしまう時、編み途中の糸と針を取り出します。時間ないけど、まぁちょっとだけ編んじゃおう。そう針を進めてみる。今編んでいるトップスは極めてシンプルだけど、1段に何回か気を抜けない点があるのがいい。無心にひたすら編むうちに、ふと、30分の間、目数以外のことを一切考えていなかったじぶんがいました。瞑想の習慣をサボり始めて、ちょっと経つけど、編み物はわたしの瞑想の代替品のひとつです。
「千里の道も一歩から」これは生きていく日々にも言えること。編みながら、人生の基本ルールとしてたびたび思い出しています。編み物が人生の主軸になっているみなさんにおかれましては、「そんなのとっくに知ってるよ」ということかもしれないですね!数年間、編み物に断続的に関わってみて、わたしは今のタイミングで大変腑に落ちています。出会えてよかったです、編み物!