6月 26, 2024
あの時私は - 遅かった一輪車
おそらく小学4年生の頃、学校で一輪車が流行った時期があった。学校備品に一輪車が納品されたのだろう、お昼休みや放課後にみなで競い合って練習し、校庭をグルグル回ったり、一輪車で鬼ごっこをしたりと学校中大騒ぎ。私もすぐに乗れるようになり、毎日楽しく遊んでいた。
が、なんせ学校備品のため順番はあまり回ってこず、いつもお腹いっぱいになれるほどは遊べない。そうなると、親にねだって買ってもらう強者が現れる。近所の同級生は家が比較的裕福だったのと、親が子供に惜しみなくおもちゃを買い与えるタイプだったため、私が思った通り一輪車をすぐに手に入れた一人だった。もちろん私もその子にせがんで乗せてもらうわけだが、やはり所詮は人の物。順番はあまり回ってこず、とにかくその子が羨ましかった。
私の親は教育にはお金をかけてくれたが、嗜好品にはとても厳しく、私は流行りのおもちゃを手にしたことはほとんど無い。バービー人形、テレビゲーム、全て友達の家で遊んだだけだ。今ではそれを有難いと思うが、その当時は同級生との差に時々打ちのめされた。それもあって、早く大人になりたかった。自分で自分の生活をコントロールしたかった。
その時の私はきっと必死にアピールをし、そして親たちは話し合ったのだろう。一輪車ブームが下火になったその年の誕生日、父と母が嬉しそうな顔をして言った。「ガレージを見てきてごらん」。あ、まずいと思った。一輪車が来ちゃう。
小学4年生でも状況は理解できるものだ。私はとても嬉しそうな顔をし、親の顔を立てるために、そこから数ヶ月は一輪車で遊んだ。あの一輪車はどうしただろうか。今ではその顛末は思い出せない。