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Text by Meri初出: 2020年amirisu 21号
テキスタイルについて学ぶ2冊。先日書店のアートブックコーナーをぶらぶらと眺めていたら、こんな2冊を見つけ、本号で紹介するのにピッタリだと買い求めました。いずれも日本の豊かな染織文化に触れることができる本です。
自然布: 日本の美しい布
安間信裕著キラジェンヌ (2018年)295ページ、¥3,500ISBN: 978-4906913787
前号でたつけ(野良着のパンツ)について色々と調べていたので、この本に興味を引かれました。日本で古来から作られてきた天然素材の布について詳しく、どのような(気の遠くなるような作業を経て)プロセスで作られているのかも紹介しています。古代から樹の皮から蔓まで、これほど多様な植物が布に使われていたという事実を認識したことはありませんでした。手間がかかりすぎて今ではほとんど作られなくなったこれらの布を、何年も全国を旅して集めた著者。とても手の込んだ、びっしりと縫われたこぎんの羽織りや、自然布と綿が組み合わされたアイヌの衣装、 数えきれないピースがつなぎ合わされた襤褸(ぼろ)など、はっとするような美しいテキスタイルが多数紹介されています。手作業で生みだされたこれらの布は、何百年も大切に使い続けられ、ぼろぼろになっても価値が損なわれないものなのだと、感動するばかりです。そのような、世代を超えて価値が続くようなものをいつのひか自分の手で作れたらいいと、夢が広がります。(海外の方には)残念ながら日本語のみですが、写真を見るだけでも楽しめると思います。
世界のインディゴ染めキャサリン・ルグラン著パイインターナショナル (2019年)286ページ、¥4,950ISBN: 978-0500516607
ヨーロッパからアフリカ、南米、中国や日本を含むアジアまで、世界中で愛される藍染を紹介した本書。世界には藍の染料が抽出できる植物が多数存在していますが、染めにまつわる基本的な仕組みは同じだということ。とはいえ、染められたテキスタイルの多様さには目を見張るものがあります。
中国のある地域では、藍染で作られたバティックはさらにプリーツ加工され、美しいラップスカートへと変容します。より寒い地域では、キルティングして温かいジャケットに。藍染した生地を叩いて光沢を出した民族衣装を纏う人々の写真も。東南アジアでは、藍染した布にカラフルで繊細な刺繍を施し、伝統的な民族衣装を作るという地域もあります。これほど多くの文化に根付き、人々に愛されてきた藍染、知れば知るほど面白い。染めの技法や地域ごとの伝統模様を見られるだけでも、染色家にとって大変参考になる本だと思います。