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Text by Meri初出: 2020年amirisu 20号
Making Marls: A Sourcebook for Multistrand Handknitting
Chroma Opaci Booksより2020年出版。320ページ。 $65.00ISBN: 978-0-9863381-1-3
著者のセシリアに「マール」をテーマにした本書の構想を打ち明けられたとき、実を言えば「糸を2本引き揃える」くらいにしか考えていませんでした。もしこれを読んでいる皆さんも同じ気持ちだったら、本書をお勧めします。
マールの歴史や、現在どのように使われているのかの解説をとても興味深く読みました。糸を2本取りで編むという行為は色々な名前で呼ばれてきました。Clouded (曇った)、motteld (まだらな)、speckled(スペックル、斑点のある)、mélange (混ざった)、そしてmarbled(霜降りのような)などの表現が17世紀くらいから資料で見つかるそうです。つまり、古くから幅広く使われていた手法なのですが、技法集などに載っているわけでもなく、誰も研究したことのない分野でした。
このマールという技法を多用している、現代のニットウェアデザイナーへのインタビューを通して、これが元々実用重視のテクニックだったことが明らかになります。セーターの糸を再利用したりする際、また手持ちの色が気に入らなくて新しい色を作る場合の工夫として、引き揃えが使われていたのでした。今ではそれが、新しい表現の手法となり、素材の組み合わせや、変わった編み地やグラデーションを作り出すのに用いられています。
本書のメインは、数種類の糸を組み合わせて様々な編み地を作る方法について。
前回の著書では、表編みと裏編みの組み合わせだけで何パターンの編み地ができるかを研究したセシリア。今回は、毛糸という素材を使って色がどのように組み合わさるのかを研究した本となっています。2本取りと3本取りでは編み地はどう変わるのか?グラデーションをもっと美しく作るにはどう組み合わせたらいいのか?本書をめくるとわかってきます。
使われているマールの技法ごとに、シンプルながら美しいサンプルパターンが紹介されています。どれも旅行中や、Stay Homeの今のような時期の「ながら編み」にぴったりだと思います。
もしあなたがニットウェアデザイナーだったら、マールをデザインに取り入れてみたくなることでしょう。古くて新しいこの技法。可能性は計り知れないと気づかせてくれました。