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Text by Meri初出: 2020年amirisu 20号
Patterns of India - A Journey Through Colors, Textiles & The Vibrancy of RajasthanClarkson Potter, Publishersより2020年に出版。288ページ。$30.00ISBN: 978-0525577096
著者のクリスティーン・チトニスさんは米国ロードアイランド州プロヴィデンス在住で、友人宅のご近所さん。紹介されて会った瞬間にお互いのことをとても気に入って、それ以来Instagramで緩く繋がっています。
フォトジャーナリストとして雑誌やウェブメディアに寄稿をしながら、インド系カナダ人の夫との間に産まれた3人の子供を育てています。ニッターでもあるクリスティーン、日常はクリエイティブで愛情に溢れるもの。その彼女がインドの写真を集めた本を出版すると聞き、これは絶対に雑誌でレビューさせてもらおう、と決めていました。
インドを知らずにカナダで育った夫のヴィジャイさんは、大人になると自分の母国を知ろうとインドに移り住み、言語や文化を何年も学んだと言います。そのあとアメリカに移住してクリスティーンと結婚しました。子供たちがインドの文化に触れながら育つよう、毎年一定の期間インドに滞在して、生活をしながら各地を回っているそうです。
本書は、そんなクリスティーンがラジャスタン州で撮りためた美しい写真を集めた一冊。ラジャスタンはインドの北西部に位置し、インドの中でも特にテキスタイル文化が深く根を下ろした地域。ピンクが美しい州都のジャイプールを中心に、ブルーシティとも呼ばれるジョードプルなど、色鮮やかなインド有数の観光地でもあります。写真集と言っても観光ガイドのような本ではなく、彼女が見つけた色、模様、テキスタイル、建築のディテール、人々の生活の中での色の使いかたなどを、たくさんの写真と心のこもった文章で紹介しています。
章立ては色で構成されています。サンドストーン(砂岩の色)、マリーゴールド、ローズ、アイボリー、そしてロイヤルブルー。
サンドストーン章では砂岩で建造された建物のオーナメントとブロックプリンティングを、インドで一番多く栽培されている花、マリーゴールド章ではマーケットの様子を、ローズ章はこの地方のテキスタイルや衣装を、アイボリー章ではインドで愛されるコットン生地と、白大理石の建造物を、そしてロイヤルブルー章では藍染のテキスタイルと青い建築のディテールを。
どのページをめくっても美しい色、色々の重なりに圧倒されます。私たちの日常がなんだかとてもつまらないものに感じられるくらい、美しい景色、テキスタイル。アイボリーが死者を悼むことを象徴する色だということなど、それぞれの色がどのような意味を持つか、生活の中でどう取り入れられているかも初めて知りました。
日本の街はどこへ行っても同じようにしか見えないのに、ラジャスタン州の街はピンク、ブルー、そしてウダイプールの白、ジャイサルマーのゴールドなど、景色が全然に違うのだなあということも知りました。世界中を旅しているインド人の友人に、「色々なところを見たけれど、正直インドが一番美しいかもしれない」を言われて以来、いつかインドに行ってみたいなあとは思っていたのですが、この本が机の上に載っているこの頃、ますますその気持ちが強くなりました。
世界中の私たちはいま、どこへも行けなくて少し閉塞感に悩まされていますが、本書『Patterns of India』のページをめくっていると、そんなことも忘れてしまいます。色の世界に夢中になり、魂はインドの風に吹かれ、そしてふと我に帰るのです。
もちろん、テキスタイルデザインの参考書としても大変価値がある本だと思います。ブロックプリンティングの職人さんの写真もたくさんありますし、街ゆく人のドレスや壁画のパターンからもたくさんのインスピレーションをもらえます。ぜひ自分用に、そしてプレゼントに、おすすめの1冊です。