Brut by Hiromi Nagasawa
今日ご紹介するのはHiromiさんのBrut。着心地の良さと美しさが両立した素敵な作品です。デザインの過程を知ることで、ますます愛おしい一着になると思います。最後まで読んでみて下さいね。
amirisu: このデザインのインスピレーションはどこから得ましたか?
Hiromi: 普段使っている木の椅子からインスピレーションを得ました。機能美という言葉が好きなのですが、毎日目にしているこの椅子は金物を使わずに木のパーツ同士を組み立て作るスタイルで何十年も前にデンマークの工房で作られリペアされながら使われてきたものです。
それぞれのパーツは木を滑らかに削り出して作られています。背もたれは厚みを持たせてふっくらと、脚は下方に向かって緩やかにシェイプされ、無駄のない形なのに触れた時にふっと肩の力が抜けるような安心感。ただそこにあるだけで佇まいがあります。そういったセーターを作ってみたくなりました。今回セーターを構成するパーツひとつひとつを見つめ直す機会が持てて楽しかったです。
amirisu: デザインの過程で、どんな苦労や工夫がありましたか?
Hiromi: 要所にボリュームを持たせることでコーディネイトのアクセントになるような形の面白さと着心地良く過ごせるような機能を両立させることがコンセプトでした。
Vネックのセーターでありながらボリュームのある少し詰まった襟元にして一枚でもあたたかく着られたり、太めの袖ですがギャザーを寄せずスッキリしたラインで袖口をすぼめることで、袖をたくしあげることも出来、着こなしのアクセントになるよう工夫しました。
それらの部分は使う毛糸の本数を増やしているので、ゲージ自体が異なります。
ゲージの違いのあるつながりの箇所をどのようにスムースに仕上げるかというところに苦労しました。
セーターだけを眺めるとミニマルな印象ですが、朝、さっと着て袖をたくしあげ、さあ、今日は何をしようかなとアクティブに過ごしていただくイメージがamirisuさんのニットに似合うかなと。
ハイネックのインナーの上に重ねて、インナーの裾も見せてといった重ね着のスタイルで着てもらうのも素敵だと思います。
amirisu: もう一枚編むとしたら何色で編みますか?
Hiromi: L18などの濃いめの色。メリヤス編み部分がよりフラットに仕上がると思うのでボリュームのあるリブ編みが引き立つようなリッチな印象のセーターに仕上げてみたいです。
amirisu: 編み物を始めたきっかけは何でしたか?
Hiromi: 定期購読している雑誌で手編みのレッグウォーマーの作りかたを見かけたことがきっかけでした。毛糸と編針があれば一から自分の手で形にできるシンプルさに惹かれた記憶があります。すぐに編み方に書かれている材料を揃え、編み込みのレッグウォーマーなのにいきなり見よう見まねで編み始めました。編み物が好きな母には内緒で。そのレッグウォーマーは左右で仕上がりのサイズがだいぶ違っていたことはご想像のとおりです。
amirisu: 好きな美術館や芸術作品はありますか?簡単に紹介してください。
Hiromi: イサム ノグチのもの。有名な彫刻家ですが、AKARIという照明器具もデザインしていて、和紙と竹から作られる提灯のような形と灯した時に柔らかく光が拡がる様子はご本人がかつていっていたように「影のない彫刻」。我が家の寝室でも使っています。